もみじろぐ

とある男の、心のほんの一部

「青くて痛くて脆い」

ネタバレ感想です。

青くて痛くて脆い

青くて痛くて脆い



結論からいうと、微妙。

住野よる先生の作品の中で、正直一番微妙。

要するに、自分の作った団体にいられなくなり、しかしその後も団体が続いていることに僻んでしまって逆恨みで団体を壊し、かつての友人を傷つけてしまったお話。

確かに、青くて痛くてたまらない。


まぁ序盤のモアイの奪還を誓うところは王道っぽいワクワクもあったし、乗っ取られたモアイのリーダーをギリギリまで明かさなかった演出はどんでん返しで、てっきり秋好はいないものだと思いこんでいた意外性からくる興奮はあった。


けど、結局、楓は友達を逆恨みでネットに晒したクソ野郎なわけで、まぁそれを描きたかったというのもわかるんだけど、なんというか人格としての薄っぺらさがなかなか後味悪いというか、主人公らしさがあまりにもなかった。

主人公らしからぬ主人公を扱う物語なら、たいていはその主人公が"主人公になる"物語になるのだけど、その大事なところが端折られていて、最終的に飽和したところだけ見せられて終わってしまう感じ。


でも、それこそが住野先生が描きたかった、リアルな痛い子の実態なのかもと思えてきた。

かくいう俺も、尖ったことを言っていた時期もあったくせに、いつの間にやら丸くなって飽和して、つまらない社会の一部になった気もする。その丸くなるまでの過程は、別にドラマチックでもなんでもなく、日々のことに忙しくしているうちに、氷が溶けるような自然さでそうなってしまっただけだ。


とんがって、青くて痛くてもろくて、崩れて、やらかして、そんで一周して社会に馴染んでいく。

そういうどこにでもある話を、どこにでもあるように、描きたかったのかもしれない。


そう思うと、別段、落胆の気持ちもわかず、ましてや住野よる先生の次回作への期待がなくなったりはしない。

うん、これはこれで、悪くない。


少し時間が経ってから、もう一度読み返してみようかな。